スウォッチ SWATCH:1983(SWITZERLAND)

スウォッチ SWATCH:1983(SWITZERLAND)

1983年に発表されたスウォッチはハイ・クオリティ、ハイデザイン、リーズナブルプライスが謳い文句の腕時計だ。スウォッチ、つまりスイスのウォッチ。スイスを代表する時計であると宣言しているこの最初のアナログ・クオーツ時計はプラスチック製で五十二個のパーツのみで構成されていた。(2017年08月19日 最終更新)

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発表と同時に世界の脚光をあびたのは、今までのスイス製時計の概念を全く礎すプラスチック製であったこと。そしてリーズナブルプライスとは低価格と言い切る安さにあった。現在でもスウォッチの価格帯は日本円でいうと6,7千円が中心で、1万5千円を越えることは滅多にない。
腕時計、特に世界に冠たるスイス製時計はジユエリーをあしらった金や銀の豪華できらびやかなもの、あるいは伝統と格式に基づいた確固たるデザインでステイタスシンボルとして輝いていた。それとは対照的にスウォッチは、あくまでも軽くモダンで低価格が身上だ。
このスウォッチが誕生した裏には、1980年代はじめ、それまで時計はスイスと誰もが認めていたスイス時計産業自体が存続の危機にみまわれていたという事情がある。
時計の国スイスの始まりは16世紀の半ばにまでさかのぼる。宗教改革者ジョン・カルヴィンが当時ジュネーヴにいたので、イタリアやフランスの時計職人たちが宗教の自由を求めて集まり、時計作りの基礎を築いていた。17世紀初めには時計職人のギルドも設営された。
そうした中で熟練した職人たちが数多く育ち、職人気質を守りながら丁寧に作りあげる高級腕時計の歴史が綿々と続いていくはずであった。隆盛を誇っていた多数の有名時計ブランドは共存共栄しており、スイスの時計王国としての名が揺らぐとは誰も想像すらしなかった。事実、第二次世界大戦後、イギリスやアメリカの時計産業が衰退していった時にも、スイスはむしろ発展の道をたどっていたのだ。
そのスイスの時計産業が大きな打撃を受けたのは、日本のセイコーによるアナログ・クオーツ時計の商品化だった。1969年のことになる。当時の日本人の大多数は、まだスイス時計こそ世界一と信じていたのだから皮肉な話だ。日本のセイコーの安くて正確なクオー ツ時計が世界に出まわ
るようになり、結果、スイスの時計生産高は大幅に落ちこんだ。先にも述べた80年代はじめ、会社の数そのものも、70年代の約3分の1に減少している。倒産や失業者が増大するなかで、スイス時計産業に以前のような繁栄をもたらすべく計画されたのがスウォッチだったのだ。当然のこととして
ライバルとして意識されたのは日本製のクオーツ腕時計だった。
1980年、SMHグループ(現スウオッチグループ)の1社、エタ社が開発に着手。今までの常識をすべて破り、革新的でありながらファッション性も高い時計作りのプロジェクトが始まった。
83年に発表された最初のモデルは、プラスチックのカラフルな美しさを生かしてはいるが、デザインはシンプルで、そんなに人を驚かすようなものではない。ただしファッションと同じように年に2回(春夏、秋冬)新しいコレクションを発表し、大量に作るにしても売るのは次の新作が出るまでの半年だけということが、徐々に注目をあびるようになる。
またそれらのニューコレクションとは別にアーチストによる限定モデル、シーズン特定のスペシャルモデルが作られているが、そのどれもが少なめの限定生産であるためコレクターの話題を呼び、オークションでも常に注同の的となっていた。
この話題のアーチストコレクションの第1号は1985年にフランスのキキ・ピカソが担当した。同じ文字盤が存在しない140例限定モデルだったので、いやが上にもコレクター心理を刺激した。その他にもアメリカのキース・へリング、日本の横尾忠則に依頼したアーチストコレクション等があり、今までに参加したアーチストの数は約100人にのぼる。
シーズンものではクリスマススペシャル、ヴァレンタインスペシャル、ハロウィーンスペシャル等があり、コレクションラインと共にミラノのスウォッチデザインラボでデザインされるこれらも人気の的となっている。
短い旗艦に、そのデザイン性、価格、発売方法の斬新さで成功したスウォッチは、発表から10年を待たない1992年4月、総生産1億本を達成している。さらにこの頃から、いわゆるファッションブランドによる時計の生産も盛んになり、スウォッチの先見性が証明されている。
また当初プラスチックでスタートしたスウォッチだが、1995年には初のメタルモデル” スウォッチ・アイロニー“を発表。その後も97年にはプラスチッククオ-ツ最薄の”スウォッチ・スキン“を発表、2000年シドニーオリンピックの公式計時を担当するなど、その発展は今も続いている。