キャシャレル CACHAREL:1962-(FRANCE)

キャシャレル CACHAREL:1962-(FRANCE)

2000年10月、20世紀以後のパリ・コレクションで、キャシャレルが20年ぶりにショーを行ったことの意味は大きい。話題はロンドンの人気デュオ、クレメンツ・リベイロをデザイナーに迎えてブランド・イメージの大リニューアルを行ったことに集中したのだが、より重要なのは、このプレタポルテ(既製 服)のメーカーが、今世紀の私たちの衣生活を振り返らせてくれたことだ。(2017年08月17日 最終更新)

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1932年、ジャン・ブスケは縫製機商人の息子としてフランスのニームに生まれた。技術学校に通って紳士物のテイラリングの資絡を取った彼は、56年にパリに渡る。そして小さな店を聞いてシャツを作った。そこでは後にプレタポルテの第1世代デザイナーとして活躍するエマニュエル・カーンをデザイナーに雇い入れたこともある。パリは当時、オートクチュールの勢いが強かったが、戦後のベビーブーム世代がティーンエイジャーとして今まさに新たな消費者になろうとしており、最初のプレタポルテのデザイナーたち、ジェラール・ピバールやダニエル・エシュテルらが出てきていた。
その機をつかむように、62年にブスケはキャシャレルを創業したのだった。キヤシャレルとは、プロヴァンス地方カマルグに生息する美しい鳥の名前である。
ファッションの未来を予見し、ターゲットをマス・マーケットに向けたキャシャレルの成功へのスプリングボードは、初のコレクションで見せたクレポン(楊柳)素材のシャツだ。
シャネルが使用したジャージーもそうだったように、それは下着用の素材だった。手入れも簡単、肩ットいらず、裾をキュッと結んでブラジャーなしで着用可という新鮮さ。まさに若い少女たちにうってつけだ。63年には、胸ダーツのないカラフルなシアサッカーのシャツを当時の人気モデルのニ
コルが着て、雑誌「ELLE」の表紙を飾る。こうして世界中のブティックのウインドウにキャシャレルがディスプレイされ、女性のワードローブに着やすいシャツが加わった。それはナチユラルで、フェミニンで、エレガントでアクティブな新しい女性像を提示していた。
さらに65年、英国のリパティ社製の伝統的な花柄プリントを、よりモダンにリニューアルしたコットンシャツが大流行。当時はプリントといえば野暮ったくて平凡なイメージだったのに、キャシャレルによって途端に酒落たものになった。
男物に近いシンプルなシャツは、ニットに勝る着心地で、今でもコレクションには欠かせない定番だ。体を締めつけない、女性がほっとするような服。買いやすい価格とクラシックでもありスポーティな組み合わせ自由の上下服。20世紀を特徴づける大衆性と若さを備えたキャシャレルの、まさに日常のアイテムが、拘束的な下着から解かれた自然な身体への意識を育み、数ある服から自由にに上下をコーディネートして思い思いに個性を演出するという服の着方を後押ししたのだ。
66年には義妹のコリーヌ・グランヴァル(現サリュー)がデザインを手がけるようになり、67年からは、コリーヌの親友、サラ・ムーンがイメージ広告を担当する。幻想的でロマンティックなキャシャレル・ガールは、70年代のファッション・イメージ広告の先鋭ともなった。69年には子供服のコレクションが発表され、輸出部門のオスカー賞を獲得。
香水でも78年に若々しい花の香りの「アナイス・アナイス」が発売され、これも81年には香水部門で世界最多販売を記録。以来ベストセラーを誇り、現在でもパリのリセエンヌの定番の香りだ。その後の「ルル」(87年)、「エデン」(90年)、「ノア」(98年)も成功を収めた。
ジーンス・ライン、メンズ、ライセンスにも積極的で展開もグローバルだ。日本人の田山淳朗がデザインを担当した90年代初期には脅威的に売り上げを伸ばしたが、後に日本のアパレルに革命を引き起こす彼の類まれなるマーケティング能力は、この90年代のキャシャレルで徹底的に培われたものである。旅行好きで視野も広いブスケは、1981年に故郷ニームの市長に選出されてから95年までは政治活動にも注力していたが、ファッション界で大手資本による吸収合併の動きが急速に強まってくると、キャシャレルも大きな経営的決断に迫られた。そして98年、プレタポルテのパイオニアとして、その成長を一線で引っ張ってきたブスケらしく、大資本と手を組むことなく家族経営を貫くことに決め、最も活気溢れた70年代の原点をみつめながら、新生キャシャレルへと改革に乗り出した。クレメンツ・リベイロというセレブリティに人気の高いスターデザイナーの名前を前面に出した積極的なアプローチは、キャシャレルにはかつてなかったものだ。このメディア時代のファッションのあり方も垣間見えてくるが、21世紀を、キャシャレルはどう捉えるのだろうか。
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