エミリオ・プッチ EMILIO PUCCI:1949-(ITARY)

エミリオ・プッチ EMILIO PUCCI:1949-(ITARY)

色彩の魔術師といわれる人はファッション界に少なくないが、極めつきはなんといっても「プリントのプリンス」の異名をとったイタリアのエミリオ・プッチだろう。(2017年08月17日 最終更新)

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エミリオプッチ
1996年にフィレンツェのビエンナーレの一環としてひらかれたかれの最初の回顧展では、その色彩の透明感と水々しさで観客を圧倒した。
いまでもただただおどろくほかないのだから、3、40年も前、それらのコレクションが発表された当時、どれほど衝撃的だったことかとついかんがえるが、じつは作家の塩野七生氏が1960年ごろデパートでプッチのファッション・ショーをみたときのことを書きしるしている。
「正直いってショックを受けたほど、その素晴しさに驚嘆させられた。色彩が素晴らしかった。日本伝統のキモノでは少しも不思議ではない色彩の配合、例えば紫と空色、紫と緑の配合を、私たちは洋服を着るとなると忘れてしまい、中途半端な色で満足してしまう。そんな感覚に、平手打ちを食ったような気がした。ショウの後にあいさつに出てきたプッチを、私はまるで色彩の魔術師を見るような思いで眺めたことを、今も忘れない」(『イタリアからの手紙』新潮社)。
その「プッチ」ブランドが、若い世代のファンも獲得して、近年リパイパルに拍車をかけていると、「タイム」誌は報じている。
エミリオ・プッチは、デザイナーにはめずらしく、パルセント侯爵というフィレンツェの名門貴族として生まれた。フイレンツェで毎年夏におこなわれる歴史的カルチョ(サッカー)大会に先立つ旧貴族出身の男たちの騎馬行列では、プッチは豪華な甲骨を身につけて白馬にまたがり、指揮官をつ
とめた。かれは生来スポーツマンであり、第2次大戦には空軍のパイロットとして従軍している。 じっさいデザイナーとしてのプッチが最初にみとめられたのもスキーウエアによってだった。
「ハーパース・パザー」誌の1948年12月号に載ったスキーをする男の素晴しい写真がアメリカのファッション界で話題になった。そのかっこういい男がエミリオ・プッチ。スキー服は自分でデザインしたものだった。それ以来、スポーツウエアは一貫してプッチのお得意分野になった。
といっても、かれはとつぜんデザインをはじめたというわけではない。プッチのファッションへの関心やデザインの才能は根っからのものだった。かれは名門出身の青年の人生修業としてアメリカに遊学し、1937年にはポートランドで学位もとっているが、その問、大学のスキークラブの制服をつくっている。40年代に侯爵が自分自身やガールフレンドのためにデザインした数々の美しいスキー服は、のちのちまでの語り草となった。プッチがはなやかな色彩のプリントを最初につかったのも女性のスキーウエアのためだったというのも、かれの発想の源泉がスポーツとバカンスにあったことをしめしている。なにしろデザイナーになったかれは一族の歴史のなかではじめての「働く男」だったのだ。
プッチが自分のブティックを最初にひらいたのが「カプリの青」で知られる南イタリアの景勝地カブリ島だったのも興味深い。その後も、エルパ島、ローマと店をひらいていき、地中海の自由奔放なバカンスの気分をファッション化した。
「カプリのエミリオ」とよばれたプッチはかれが熟知していたアメリカで圧倒的な支持をえて、ニーマン・マーカス賞、スポーツ・イラストレイテッド賞などを次々に受賞し、「ヴォーlグ」などのファッション雑誌は競ってかれを特集した。
1960年代はプッチプリントが全米で全開した時代だった。それは第2次大戦後ヨーロッパの大方のファッションがまだほとんどすべて上流階級を中心にまわっていたころに、プッチは貴族出であるにもかかわらず(あるいはそうだからこそ)、男女間や世代間の関係もふくめて、ライフスタイルが根本的にかわってしまったことを感じとって、ファッションにカジュアルな表現をあたえることに成功したからだろう。その意味で、プッチはたんにファッション・デザイナーであるだけでなく、新しいライフスタイルの偉大な提案者だった。
現在の「プッチ・リバイバル」がさかんに語られるようになったのは、エミリオがまだ存命中の1990年のことである。この年「ニューヨーク・タイムズ」などがエミリオ・プッチの回帰を大々的に報じたかとおもうと、マドンナがプッチを着た。「タイム」誌によると、クラシックなプッチプリントがいままたトレンディであるだけでなく、新作も若いファンのあいだで好評らしい。ソファーなどサイケ調プリント
の家具がブランドにくわわっているのも、ライフスタイル・デザイナーのプッチには似つかわしい気がする。
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